水谷彰良(著)『新 イタリア・オペラ史』(音楽之友社)

2006年に音楽之友社から刊行された名著『イタリア・オペラ史』が、全面的な改稿(あらすじが増えているのと、2015年にいたるまでの現代作品も増えている)によってグレードアップ。「あとがき」にあるとおり、音楽学がオペラを研究対象とし始めたのはこの半世紀以内のことであり、いまでもなお、イタリア・オペラがドイツ・オペラ、なかんずくヴァーグナーの楽劇によって打倒されたとする浅薄な史観が根強いわけですが、日本においてイタリア・オペラの学的探究をほぼ孤軍奮闘といっていいかたちで続けてきた著者の記念碑的名著が、こうして書き継がれ、版を重ねていくことは、その意味でもひじょうに意義深いことだと思います。 ・・・

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一柳慧氏が音楽賞を創設、応募受付開始

作曲家・ピアニストの一柳慧さんが、自身の名を冠した音楽賞「一柳慧コンテンポラリー賞」を創設しました。「芸術音楽を基軸に、優れた活動を行っている音楽家(作曲家、パフォーマー、指揮者、評論家など)を対象に選び、芸術音楽の充実と活性化、また音楽を通した豊かな社会の創造を目的とし」、「作曲、パフォーマンス・指揮、執筆の各ジャンルの作品を対象に応募を受け付け、一柳さんが審査を行い、受賞者(原則として1名)を決定」するとのこと。第1回の応募期間は2015年11月、2016年1月初旬に受賞者が決定します。詳しくは下記をご参照ください。[木村] CAMERATA Tokyo|「一柳 慧 コンテンポラリー・・・

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【CD】中井正子『ショパン:ピアノ・ソナタ第2番・第3番/幻想曲/幻想ポロネーズ』(ALM RECORDS)

録音ではドビュッシーやラヴェルの全集を出してフランス音楽に定評のあるピアニスト、中井正子さん待望の新譜が届きました。ショパンは『バラード&即興曲』に続いて2作目。晩年にフランス中部のノアンで作曲された作品を、ロマン的な性格と故郷ポーランドを思わせる民族的な性格とをみごとに融合して、情緒たっぷりに伝えてくれます。ライナーノーツにはショパンが夏を過ごしたジョルジュ・サンドの家の庭の写真が載っています。 [桑野] ALM RECORDS|ショパン:ピアノ・ソナタ第2番・第3番/幻想曲/幻想ポロネーズ|中井正子

【CD】『和田誠ソング・ブック』発売!

アルテスで昨年2冊の作品集を刊行した(『Record Covers in Wadaland』『Book Covers in Wadaland』)イラストレーター/デザイナーの和田誠さんは、ご存じのとおり音楽に造詣が深く、作曲家としてもご活躍です。これまで数多くの歌い手に提供してきた楽曲を自ら選んで収めた作品集『和田誠ソング・ブック』が発売になりました。 初CD化となるピンキーとキラーズ「恋のサンボラレ島」、森山良子「小さいタネから」、木の実ナナ「再会」、坂本九「4人目の王さま」、由紀さおり「呼ばないで」のほか、小椋佳、岸洋子、平野レミ、カルメン・マキ、中山千夏、デューク・エイセスなどが歌・・・

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【book】東儀秀樹(監修)、小野幸惠(著)『東儀秀樹と雅楽を観よう』〈新版 日本の伝統芸能はおもしろい〉(岩崎書店)

以前ご紹介した『桐竹勘十郎と文楽を観よう』と同じ〈新版 日本の伝統芸能はおもしろい〉シリーズの新刊。著者は本誌で「和の変容」を好評連載中の編集者・ライターの小野幸惠さん。雅楽の貴公子・東儀秀樹さんを監修者に迎えて、子どもたちに向けての雅楽入門書という趣向ですが、なかなかどうして、大人にもじゅうぶん楽しめる&役に立つ一冊となっています。[木村] 岩崎書店|東儀秀樹と雅楽を観よう

【book】鈴木裕之・川瀬慈(編・著)『アフリカン・ポップス! 文化人類学からみる魅惑の音楽世界』(明石書店)

今年のはじめに刊行された『恋する文化人類学者』(世界思想社)でギニアのアイドル・スター歌手との結婚というご自身の体験を発表したばかりの鈴木裕之さんが、国立民族学博物館の川瀬さんとともに編んだ、現代アフリカ音楽研究のアンソロジー。 対象を見ると、カーボ・ヴェルデのクレオール音楽に始まって、ターラブ(タンザニア)、グリオ、トーマス・マプフーモ(ジンバブエ)、コート・ジヴォワールのレゲエ、フェラ・クティのアフロ・ビート、エチオ・ジャズ、カメルーンのヒップホップという具合に、リスナーもワクワクさせられるバラエティに富んだ音楽やミュージシャンが並ぶ。 そうしたおなじみの音楽や音楽文化に、研究・・・

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【book】濱田髙志(編)『宇野誠一郎の世界』(月刊てりとりぃ編集部)

この『宇野誠一郎の世界』は、『チロリン村とくるみの木』や『ひょっこりひょうたん島』をはじめ、1950年代から2000年代に至るまで、無数のテレビ番組、ラジオ番組、舞台、CMなどの音楽を手がけた作曲家・宇野誠一郎を追悼して(2011年4月逝去)、濱田髙志さんが編纂、私家版として昨年末に刊行したもの。 編者ほかによるインタビューと本人が遺したテキスト、近しい人たちの寄稿(井上ひさし、黒柳徹子、中山千夏、⋯⋯)、スタッフへのインタビュー、作品リストなどで構成されている大冊です。 本書の作品リストのなかに『W3(ワンダー・スリー)』を見つけて、モノクロの画面を懐かしく思い出したりもしました・・・

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【book】ピート・ワッキー・エイステン(著)、風間三咲(訳)『シューマンの結婚──語られなかった真実』(音楽之友社)

ローベルト・シューマンとクララ・ヴィークの結婚といえば、「頑固でわからずやの旧弊な父親から娘を救い出して結婚!」というニュアンスで繰り返し語られますが、ほんとうにシューマンは「白馬の騎士」だったのか、クララの父フリードリヒ・ヴィークはそんなに「頑固でわからずやの旧弊な父親」だったのか──当時の裁判の記録をひもとくことで、真実を明らかにしようという本が、これです。シューマンの本は多けれど、またローベルトとクララの恋愛についても多くが語られていますが、ふたりの結婚の真実が1冊の本になったのはこれが初めてでは? 「ロマン派の旗手」というシューマン像がいかにして創られたかもわかってくる好著です。[木村・・・

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【CD】下山静香『ショパニアーナ』(fontec)

スペインや南米のピアノ音楽を中心に個性的な活動を展開するピアニスト、下山静香さんが「ショパン」をテーマに快作を届けてくれました。ヴィラ=ロボス、エスプラ、セヴラック、モンポウという4人の、いずれも民俗的な特徴をそなえた作曲家が、ショパンに捧げた曲ばかりを集めたアルバム。大地の香りと、ショパンの音楽のロマンティシズムがとけあった独特の雰囲気を伝えてくれます。[木村] fontec|ショパニアーナ/下山静香

【CD】ジョー・パワーズ+青木菜穂子『Jacaranda en Flor』(Bishop Records)

「モダン・フォルクローレ」というそうです。ハーモニカ奏者のジョー・パワーズとピアニストの青木菜穂子が、初共演から6年をかけ、満を持して録音した快作。アルゼンチン音楽の「再解釈」ともいえる幸福感にみちたアルバムです。[木村] Bishop Records|ジョー・パワーズ - 青木菜穂子 / Jacaranda en Flor