【CD】塚谷水無子(ピアノ)『涙のバガテル~天使のピアノ~シルヴェストロフ:ピアノ作品集』(Pooh’s Hoop)

2種類のオルガンによるJ.S.バッハ《ゴルトベルク組曲》のCDなどで注目された“ケンバニスト"塚谷水無子さんの新作は、なんとウクライナの現代音楽作曲家シルヴェストロフのピアノ作品集。一粒一粒の音のたたずまいに耳を澄ますかのような透徹したピアニズム。美しさとはなにか、考えさせてくれる好盤です。[木村] Pooh's Hoop|塚谷水無子

ホアン・G.ローダラー(著)、高野光司・安藤四一(共訳)『【新版】音楽の科学──音楽の物理学、精神物理学入門』(音楽之友社)

ようやく、という感のある出版。じつをいうとアルテス木村が音楽之友社在職中に、長らく絶版になっていた本書を再版する話がもちあがり、すると原出版社では新版が出ているとのことで、翻訳のほうも全面改訂という流れになり、けっきょくは木村在職中には果たせずに置き土産になってしまっていた仕事なので、こうして本のかたちになったものを見て、よかったよかったと安堵しております(その改訂の中で懇意になった安藤四一先生にはアルテスでも『コンサートホールの音響と音楽表現』という本を書いていただきました。→詳しくはこちら) このところブームの感もある「音楽と科学」をテーマとした出版物のなかでも、本書は「基本図書」で・・・

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【book】野口剛夫(著)『フルトヴェングラーの遺言──混迷する現代へのメッセージ』(春秋社)

先日に続き、野口剛夫さんのフルトヴェングラー関連書。フルトヴェングラーが残した「ことば」を手がかりに、その哲学や人生観を紹介していく。ひとつ紹介してみましょう──「現代人は音楽においてもつまみ食いを延々と続けている……まさしく頽廃の兆候のひとつである」。 http://www.amazon.co.jp/dp/4393935861 [木村]

【楽譜】岩下智子(編)『プロコフィエフ:フルート・ソナタ ニ長調 作品94』(全音楽譜出版社)

フルート奏者の岩下智子さんが新しく編んだプロコフィエフのフルート・ソナタ ニ長調(作品94)の楽譜が出版されました。 ご本人からはこんなメッセージをいただいています。 このたび、4月のヘンデルの『フルートソナタ』に引き続き、私が編集したプロコフィエフの『フルートソナタ作品94』が、全音楽譜出版社から発売されました。これまでに出版された様々な版、ヴァイオリン版、さらに文献を念入りに検証し、新たに編集致しました。 当時、プロコフィエフがどこでフルートにインスピレーションを受け、どんな状況下で作曲したのか、またその作品がヴァイオリン版に編曲され、再び今日我々フルーティストが演奏する・・・

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【CD】上野耕平『アドルフに告ぐ』(日本コロムビア)

1発目の音から持っていかれます。現在、東京藝大4年生の天才サックス奏者のデビュー・アルバム。タイトルはちょっとどきっとしますが、サックスの始祖へのリスペクトということで。おすすめします。 http://columbia.jp/uenokohei/disco.html [木村]

【book】野口剛夫(著)『フルトヴェングラーを超えて』(青弓社)

今年前半の音楽界の話題を独占した感のある「ゴースト問題」のきっかけとなる論説を『新潮45』に発表し注目をあつめた著者が、これまでに発表したフルトヴェングラーをめぐるエッセイや講演をまとめたもの。「佐村河内問題とフルトヴェングラー」なる一文も。「私がしてきたことはフルトヴェングラーという芸術家を通した自己探求、自己錬成の試みなのかもしれないと思う」という著者ならではの情熱にあふれた一冊。 http://www.seikyusha.co.jp/wp/books/isbn978-4-7872-7365-9

【book】アントニー・バートン(著)、角倉一朗(訳)『古典派の音楽──歴史的背景と演奏習慣』(音楽之友社)

同じ著者、訳者のコンビによる『バロック音楽──歴史的背景と演奏習慣』に続く第2弾。古典派音楽を歴史的に位置づけた第1章、記譜法と解釈を論じた第2章、資料やエディションについて論じた第7章のあいだに、鍵盤楽器(第3章)、弦楽器(第4章)、管楽器(第5章)、歌唱(第6章)という各論が挟まれる構成になっているつくりも前巻と同様。各論はそれぞれの分野の第一線で活躍する演奏家が執筆。写真や譜例も豊富で、この分野の音楽を演奏するさいに、まず参照すべき基本的な事項がおさえられたハンドブックになっていると思います。 それにしても、角倉一朗さんのここのところの訳業のハイペースさには瞠目させられます。鍛え抜・・・

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【CD】波多野睦美(歌)、西山まりえ(バロックハープ)『月の沙漠〜日本のうた』(オフィスソネット)

本誌で「うたうからだ」を好評連載中の波多野睦美さんと、バロックハープとチェンバロの第一人者として活躍する西山まりえさんが日本のうたに挑戦。以前、波多野さんにお話をうかがったときに「バロックハープのざらっとした音が意外にも日本のうたに合うんですよね」とおっしゃっていましたが、なるほど、と思いました。11/6(木)には波多野さん、西山さんに鈴木優人さん(ピアノ)を加えてのコンサート「波多野睦美 歌曲の変容シリーズ第9回 月の沙漠」がおこなわれるほか、11/19(水)にはピアニストの河野紘子さんとの「朝のコンサートvol.6」も(今回はミュージカル・ナンバー特集)。思えば、波多野さんと西山さんとのコ・・・

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【book】ひのまどか『戦火のシンフォニー──レニングラード封鎖345日目の真実』(新潮社)

http://www.shinchosha.co.jp/book/335451/ ショスタコーヴィチの交響曲第7番のレニングラードでの初演が、1942年8月9日、ナチス・ドイツによる「レニングラード900日封鎖」のさなかに、まさに極限状況下でおこなわれたことを、膨大な史料をもとにした緻密な検証によって明らかにしたノンフィクション。「音楽物語」のスタイルでの作曲家の伝記で知られる著者ですが、今回は「小説ではなくノンフィクションで」という編集者の強い意向で、一から書きなおしたとか。抑制された筆致が、現実の重みを感じさせます。巻末には演奏したレニングラード放送交響楽団のメンバーの顔写真が並んで・・・

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【電子版音楽雑誌】『ERIS』新編集長に荻原健太さんが就任

『アルテス』とコンセプトも方法論も近い電子版音楽雑誌の先輩『ERIS(エリス)』(購読無料)は、創刊時からの編集長・高橋健太郎さん(アルテスパブリッシングより今のところ唯一の単著『ポップ・ミュージックのゆくえ』発売中)が退き、9月4日発行の第8号から、音楽評論家/音楽プロデューサーとして活躍している荻原健太さんが新しい編集長に就任。新たな連載陣が加わって、どんな変化を見せるのか、僕らも注目しています。 http://www.musicman-net.com/business/38792.html