【book】鈴木裕之・川瀬慈(編・著)『アフリカン・ポップス! 文化人類学からみる魅惑の音楽世界』(明石書店)

今年のはじめに刊行された『恋する文化人類学者』(世界思想社)でギニアのアイドル・スター歌手との結婚というご自身の体験を発表したばかりの鈴木裕之さんが、国立民族学博物館の川瀬さんとともに編んだ、現代アフリカ音楽研究のアンソロジー。

対象を見ると、カーボ・ヴェルデのクレオール音楽に始まって、ターラブ(タンザニア)、グリオ、トーマス・マプフーモ(ジンバブエ)、コート・ジヴォワールのレゲエ、フェラ・クティのアフロ・ビート、エチオ・ジャズ、カメルーンのヒップホップという具合に、リスナーもワクワクさせられるバラエティに富んだ音楽やミュージシャンが並ぶ。

そうしたおなじみの音楽や音楽文化に、研究者たちがどうやって出会い、現地でどんな体験をした末にこうした研究をまとめることができたのか、そのプロセスこそが「学問する」ということである、という本書のコンセプトがすばらしい。しかも「学術用語は使用せず、抽象的な議論は避け、注も付せず、参考文献は最小限にとどめている」という執筆スタイルにも大いに共感し、胸が弾んだ。まずは鈴木さんによる「はじめに」を読んでほしい。[S]