【book】濱田髙志(編)『宇野誠一郎の世界』(月刊てりとりぃ編集部)

この『宇野誠一郎の世界』は、『チロリン村とくるみの木』や『ひょっこりひょうたん島』をはじめ、1950年代から2000年代に至るまで、無数のテレビ番組、ラジオ番組、舞台、CMなどの音楽を手がけた作曲家・宇野誠一郎を追悼して(2011年4月逝去)、濱田髙志さんが編纂、私家版として昨年末に刊行したもの。

編者ほかによるインタビューと本人が遺したテキスト、近しい人たちの寄稿(井上ひさし、黒柳徹子、中山千夏、⋯⋯)、スタッフへのインタビュー、作品リストなどで構成されている大冊です。

本書の作品リストのなかに『W3(ワンダー・スリー)』を見つけて、モノクロの画面を懐かしく思い出したりもしましたが(『ひょっこりひょうたん島』をかろうじてリアルタイムで見た世代です)、ご本人が語る音楽論がじつに新鮮で興味深く、随所で膝を打ったり蒙を啓かれたり、ワクワクさせられました。

たとえば、リズムというものについてのこんなとらえ方。

「リズムというのは、共振状況を引き起こす行為の根源に位置するものなんです。ですから共振を生み出すのはメロディではなくて、まずはリズムなんですよ。何かを共振させることによって、他者がそれに共振し、そこで共感なり共鳴なりの感情を持ち始める。そして、そこから発生した感情が大きな波となり、うねりを持って行くという理屈です」という一節。

そして、そのリズムの動きが「新幹線の登場で止まっちゃった」というのです。自分が幼少期にテレビで親しんだ音楽が、こんな深い洞察に基づいて作られていたことに、改めて感動させられます。

ハッとさせられた言葉を挙げていくとキリがありませんが、作曲家と作品を主役に据え、本全体から敬意が溢れてくるような構成と内容は濱田さんならでは。函入り・上製448ページ、限定1000部(ナンバー入り)、装画は宇野亜喜良という、私家版とは思えない(私家版だからこそ?)贅沢な造本とともに、一家に一冊・永久保存版の名にふさわしい丁寧なすばらしい仕事です。[S]

※購入方法と本書の概要は以下の通り。

[ご予約方法]ご購入を希望される方は、「てりとりぃ」編集部 territory.tvage[アットマーク]gmail.com まで、件名に「宇野誠一郎の世界購入希望」と表記の上メールにてお知らせ下さい。到着後3日以内にお支払い方法を記載したメールを送ります。*私家版につき、本書の書店販売は行ないません。

【私家版「宇野誠一郎の世界」濱田高志・編】
A5変型/上製・函入/448頁 2014年12月20日発行/定価:5,400円(本体価格:5,000+税)
送料:500円(梱包手数料含)
発行者:里見京子/発行所:月刊てりとりぃ編集部

[執筆者]井上ひさし、黒柳徹子、横山道乃、中山千夏、堀絢子、恒松龍兵、井上ユリ、井上麻矢、武井博、橋本一郎、栗山民也、篁ゆき、井上都、高林真一、泉麻人、伊藤悟、田中雄二、加藤義彦、安田謙一、足立守正、高岡洋詞、千秋直人、江草啓太、田ノ岡三郎、向島ゆり子、橋本歩、熊谷太輔、鈴木啓之、濱田高志、里見京子

[新規取材&対談再録]田代敦巳、木村光一、宮本貞子、熊倉一雄、おおすみ正秋、柏原満、鈴木徹、山田昌子、金原俊子

週刊てりとりぃ