村中大祐氏が「イノベーション・アワード」にノミネート! 今年5年目を迎える音楽フォーラム「Classical: NEXT」(寄稿:柳沢晶子)

classical next

クラシック音楽の歴史を1本の大きな木に例えてみよう。それは中世から現代まで様々なスタイルやジャンルの枝を伸ばしながら成長を続けている。その木はまた、演奏家、作曲家、フェスティバル、エージェント、コンサートホール、教育機関、文化芸術団体、レコード会社、メディア等など多種多様な芸術活動とビジネスによって支えられている。

2012年にベルリンで産声を上げたClassical: NEXTは、クラシック音楽界のあらゆるプロフェッショナルが毎年5月末、欧州の一都市に集まって開催される新しいスタイルのフォーラムだ。2012年ミュンヘンでの第1回に続き13年と14年はウィーンで開催された。2015年はロッテルダムの複合コンサートホールDe Doelenを会場とし、45ヵ国から1000人あまりのクラシック音楽関係者が集まった。

例えば、予算の削減や聴衆の高齢化はクラシック音楽界が抱える世界共通の悩みだ。また、ボーダーレス化やインターネットの発達はクラシック音楽界にもじわじわと影響を与えている。そこで必然的に現行のシステムや枠組みにチャレンジする新しいアイデアやビジネスモデルが登場してくる。
現在のクラシック音楽界で何か起こっているのか?何が課題なのか?どんな解決策があるのか?
ひとつの木の将来を担う仲間とシェアし、セクターを超えて一緒に考えて行くプラットフォームがClassical: NEXTだ。

開催期間中は興味深いプログラムでぎっしり。昼間は展示会、最新の課題やトピックについて話し合うネットワーキング・ミーティングやコンフェレンス等が行われる。特に昨年からオーケストラの参加が増え、これを受けて「グローバル・オーケストラ・ネットワーキング・ミーティング」が英国とカナダのオーケストラ協会の主導で始まっている。Classical: NEXTは、近い将来この輪を日本も含めたアジア諸国へと広げたいと考えている。夜は審査員に選ばれた演奏家たちのショーケースが行われ、翌年のコンサートブッキングに繋げるチャンスも用意されている。
クラシック音楽界の新人類ともいえる“インディー・クラシック”を担う若い作曲家や演奏家達がカーネギーホールやウィグモアホール(ロンドンの室内楽コンサートホール)といったエスタブリッシュメントと談笑する光景もしばしば見られる。

毎年充実していくプログラムの目玉の1つとして昨年から始まったのが「イノベーション・アワード」だ。クラシック音楽界において評価に値する革新的な活動を行う30の団体や個人がノミネートされ、ショートリストを経て最終日に受賞者の発表がある。私は今年、世界各地から選出された18人のノミネーション委員の一人として日本から2名の候補者を推薦することになった。
一人目は横浜を本拠地とするOrchestra AfiAの創始者で、英国のEnglish Chamber Orchestraの国際招聘指揮者でもある村中大祐氏だ。村中氏が日英のオーケストラと推進する「自然と音楽」というコンセプトは、茶道、能、そして鎮守の森を生んだ日本人の感性と自然を観る目と向き合い、深く掘り下げた所に生まれるユニバーサルな演奏表現を追求している。
二人目は大井浩明氏。ピアニストとして「Portrait of Composers」シリーズでクセナキス、カーゲル、ミュライユなど有名無名の現代作曲家の全曲演奏、膨大な量と意表を突く新作委嘱、バッハやベートーベンの古楽器による新解釈の録音など超人的な活動を続けている。偶然にもお二人、日本では音楽と一見無縁な学問をそれぞれ東京外語大と京都大学で学び、その後、欧州の一流音楽大学で徹底的に西洋音楽を研鑽している。共に仕事はオリジナルでボーダーレス、そして、クラシック音楽の常識という縛りや枠を超えた、自由でスケールの大きなメッセージを発信している。

イノベーションアワード2016 ロングリスト

今年5回目のClassical: NEXTは更に多くの参加者を集め、昨年に続きオランダのロッテルダムで5月25日から28日まで開催される。村中氏はショートリスト入りを果たし最終選考へと進んでいる。クラシック音楽界の現在とNEXTを肌で感じ、グローバルなネットワークを広げたいと考えるプロフェッショナルの方々には参加を是非おすすめしたい。

http://www.classicalnext.com/

柳沢晶子(やなぎさわ・あきこ)
www.muarts.org.uk